デュークも忙しいけどユンカナン国王であるお父様も、いつだって多忙だ。
義母や家族が集まる時に、そんな確定でもない曖昧な話を、持ち出す訳にもいかないし……かなり、気持ちは焦れてはいた。
今冷静になると、私はどうかしてた。多忙な彼になかなか会えないからって、自分が城を離れて、その警護の責任者に指名するなんて……。
自責の念に駆られ鬱々と塞いだ様子の私に、エボニーとアイボリーは不思議そうな様子だ。
きっと彼女たちは、この離宮に来れば私は大手を振ってデュークを連れ回すことも出来るし、機嫌を直してすぐにそうするのだろうと思っていたのかもしれない。
けれど、私は成人した分別のある大人なのだ。
生まれ付き持っている権力をもって、好きな人を警護の責任者として連れて旅行をしてしまった。
待って。なんて……私は子どもっぽい真似を、してしまったのかしら。
「姫。せっかくの離宮に来たと言うのに……何を落ち込んでいらっしゃるのですか? 少し出かけられたら、いかがですか?」