結婚前は、デートらしいことは一度もしなかったのに、浴衣を着て夏祭りに行ったり、名画座で“グリーン・カード”を観たり、いちょう並木を腕組み歩いたり…。

いつの間にか、私の病んだ心も体も、すっかり元気になっていた。

それこそ、再就職したくなるほどに。

しかし、元気になったのだから、そろそろ晃輝のもとを巣立たなければいけないと思う。

こんな幸せな日々を失いたくないに決まっているが、晃輝の重荷になることは、もっと辛いから…。