この春、私は大学を卒業した。
就活も周りと比べればスムーズに進み、そこそこ良い会社の内定も貰っている。
最初の頃にあった緊張や胸の高鳴りは全て消え
今ではただデスクに向かいカタカタとキーボードを鳴らすだけ。
同期の乾和葉は、よくもあんなに楽しそうに仕事ができるものだと尊敬する。
今だから言えることではあるけれど、あの子は、、、乾和葉は、昔から変わり者だったと言うかなんというか、少し周りと違っていた。
それは良くも悪くも彼女だけを突き動かし、周りを置いて行ってしまう。幼馴染の私は、ただそんな才能があったんだともう慣れてしまったけれど。
「はぁ、、、やっと終わった。」
私の重いため息をよそに、和葉はこの言葉を待ってましたと言わんばかりに満面の笑みでガタッと作業用の椅子から立ち上がり、エナドリを差し出してくれた。
「お疲れ様!ほらこれ!私からの差し入れ〜!」
にこにこで半強制的に渡してくるエナドリには、彼女の優しさと思いやりが詰まっていると思う。「ありがと」と感謝を表すと、彼女の笑顔は三割増しになったような気がする。