彼の部屋の片隅には、まだ全然仕上がりそうもない、第二号の模型飛行機があった。

「飛行機作り、あんまり順調じゃないの?」

「うん。失恋のショックでね」

笑いながら彼は言う。

「もう…!でも、本当にごめんね?私、二度と及川くんの気持ちを疑ったりしない」

「僕の方こそ、もう不安にさせるような言動はしないよ。照れてばかりいたらダメなんだってこと、よくわかったら…」

私たちは、もう一度、二度…何度も口づけを交わした…。


彼がこれまで徹底したプラトニックな関係で居た理由というのが、

「まだ付き合う前、心理テストかなんかで、三井さんが“恋人とはあまりベタベタしたくない”とか“早くに関係を進めたくない”って選択してたから、それを尊重したくて」

とのこと。

そんな、私自身ですらうろ覚えのことさえ、彼はよく覚えていてくれて、その誠実さに胸を打たれた。