別れたあの夜から、私はずっと考えた。

確かに、例の男にあれこれ言われたことで不安になったのは間違いないし、あんな風に強引に迫られるのも悪くないと、ほんの一瞬だけでも思った。

しかし、それは全て間違いだったと気付いたのだ。

だからといって、私から友達に戻りたいと言ったくせに、また復縁してほしいなんて身勝手なことを、どの面下げて言えるだろう。

「なんかさ…今年の夏は淋しかったよ。今までずっと、三井さんが一緒だったから」

照れたように及川くんが言い、やはり私はとんでもない間違いを犯したのだと確信した。

「及川くん。今更こんなこと聞くのもどうかと思うけど…付き合ってた頃、少しは私に恋心抱いててくれた?」

そう尋ねると、彼は目を見開いて、

「少しはも何も、僕はいつだって…」

卑怯でも、その続きを聞きたい。