彼も私を見つめ返してくれたものの、先に目を逸らされ、

「なんか…照れるよ、急にそんなことされると」

笑ってそう言われたので、私は手を離した。

いつもなら、相変わらずシャイな人だなと微笑ましく思ったのに、今夜に限って、何故だろうか。

「アンタの片想い」

あの、嫌な男の言葉が、やけにリアルに感じられてしまった。

及川くんのことなら、何もかも知っている気でいたけれど、それはあくまで友達としての及川くんのことだけなのかもしれない。

私のことを具体的にどう思っているのか、とか、どうしてここまで徹底したプラトニックなのか、とか、将来のことはどう考えているのか、とか…。

そんな不安が洪水のように襲いかかってきた。

急に、何もかもが壊れていったような気がして…。

「三井さん、ホントに今日はどうしたの?」

いつもの優しい声を聞くことすら、今はもう、つらくて仕方ない。