「今からですか?もう食べ終わったんじゃありません?」

「それが、これからなんだよ」

私は、重い溜め息をつき、

「今回きりということにして頂けるのなら…」

「やったね。じゃあ、今夜は付き合ってもらうよ」

「…食べたらすぐ帰りますけどね」

「それは、アンタ次第だね」

「どういう意味ですか?」

「もう、その彼氏の元に戻る気になれなくなるかもよ?」

この自信は何処から来るのだろう。


致し方なく、今日だけこの男と夕飯を食べることとなってしまった。

テーブルの上の手をいきなりとられ、

「何するんですか!」

そう怒ると、

「ピアノやってるせいか?手タレみたいに綺麗な指してるよな」

いきなり馴れ馴れしい!

そう憤りつつも、私はずっと、及川くんとだけ付き合ってきたので、そんな強引さに、不覚にも一瞬ドキッとしたことは否定できない…。