隆は少し遠慮していたが、あの傷のために、温泉街に住んでいながら、温泉に入れない隆のことを、少しでも癒やしてあげたかった。

一緒に、部屋の露天風呂に入りながら、私は彼の傷跡に、そっと口づけた。

「紫…こんな傷、気持ち悪いだろう?」

「気持ち悪いわけがないわ。申し訳ないとは思うけど…」

「それなら、気にしなくていいのに」

隆には本当に申し訳ないことをした。

しかし、滅茶苦茶な私を受け止めてくれて、今は二人で幸せになれたのだから、愛しい傷でもある。

「ねぇ。隆は、私のことを開業医の娘としてでなく、一人の女の子として好きになってくれたんでしょう?あの頃…」

「当たり前じゃん。中高生が、いちいちそういうことを考えて、相手を選ばないでしょ、普通」

「そうね…でも、再会してからも、もうどうしようもなくなったダメな私でも受け入れてくれて、私、本当に嬉しかったの…」