正社員として、フロント業務をやってみないかと声をかけられ、今ではすっかりホテルの顔だ。

隆も、とても喜んでくれた。

両親はと言うと…。

当然、かなり激怒していたが、私は私で、徹底して突っぱねた。

「私は、単なる病院の後継者として生きるつもりはありません」

私は一人娘だが、将来、遺産相続する気はないことも伝えた。

結局、赤の他人である外科医を養子として迎えることにしたそうだが、それなら何故、最初からそうしなかったのかと思う。

私から恋する権利を奪い、結婚させなくても、そういう方法だってあったのに。

しかし、もう“過去の家族”のことは、忘れることにした。

“現在の家族”である隆に、何かお礼がしたくて、“露天風呂付きの客室でのんびり過ごす一日”をプレゼントすることに。

「誕生日でも記念日でもないのに、いいの?」

「いいのいいの!社員割引も使えるし」