私は彼にしがみついて、

「ねえ、私って魅力がない?二人きりになっても、戸倉はその気になれないの?」

そう言ったら、優しく私の髪を撫でながら、

「違うよ。心の底から好きだからこそ、焦りたくないんだ。本当は緒方だって、今はまだその時期じゃないって思ってるんだろう?俺にはわかるよ…好きな子の気持ちぐらい。だからこそ、既成事実云々なんて理由で抱くなんて、とても出来ない」

「戸倉は平気なの?私が他の誰かと結婚しても…」

「平気な訳がない!だから、時間をかけて、ちゃんと俺たちのことを認めてもらおうよ」

戸倉の誠実さは、痛いほど判る。

しかし、両親が「話せばわかる」ような人ではないことを、彼は判っていないようだ。

「ねぇ…3年の自由登校の時期に入ったら…私と駆け落ちしてくれないかな?」

かなり滅茶苦茶を言っていることは、当時の私にも判っていた。