新入社員のくせに、仕事も放ったらかして、私はひたすら諒の病室につきっきりで祈り続けた。

諒のお母様に連絡したくても、まだ彼の実家の連絡先を知らないまま、私たちはあんなことになってしまった。

ボロボロな姿の私は、俯いたまま、諒の手を握りしめていたのだが、その手に少し力がこめられ、思わず顔を上げる。

うっすらと、諒の目が開いていた。

「諒…!」

私は、すぐにナースコールを押した。

ドクターも駆けつけてきて、

「よかった。峠は越えたようですね」

その言葉を聞いて、今度は安堵の涙が止まらなくなった。

「佐々木さん…」

諒は私をぼんやり見つめながら言う。

意識が回復したことが何より嬉しく、諒が助かるのなら、恋の行方がどうなっても構わなかった筈なのに…。

他人行儀に苗字で呼ばれ、胸がチクリとした。