「ねぇ、前から思ってたことがあるの」

もう長い付き合いの彼・諒の運転する車の助手席で、私は呟いた。

「なに?」

「諒、最近よく結婚の話するじゃない?」

「ああ。付き合いも長いし、寧々も仕事に慣れてきただろうから」

私は、すっかり見慣れたその横顔をチラリと見遣ったあと、

「諒には、後悔してほしくないのよ。まぁ、私もだからお互い様だけど」

「ん?」

「ほら…私たちって、高校の終わりに知り合って、19で付き合い始めて、かなり遅咲きというか…何もかも、お互いしか知らないじゃない?諒が浮気してない前提で言うと、だけどね」

「浮気なんかするわけないだろ」

少しだけ怒気を含んだ声で彼が言う。

「わかってる。諒がそんな人じゃないことぐらい。だからこそ、提案したいのよ」

「話が見えてこないな…」