「あれ~?与田さん?」
「え?あ」
「どうしたの?」
「那原さんこそ、どうして?今日は収録ないはず」
「あ~実は別の番組の打ち合わせで」
那原さんは与田さんの髪に触った。
「ゴミ、ついてる」
与田さんの顔がみるみる真っ赤になっていく。
那原さんが不思議そうに首をかしげて与田さんを見た。
「どうしたの? 顔、赤いよ」
「あ、その」
「あれ?何さんだっけ?今朝はどうも」
「那原さん、永野さんとお知り合いなんですか?」
「ああ、今朝、道案内を頼んでね」
「道案内?」
「実は今日、ここに来る前に寄る場所があったんだけど。わからなくて」
「でも、車から出てきたような」
「だって乗ってもらって案内してもらった方が早そうだったし。てか、見てたの?」
「あ、それは」
私はなんだか、アホらしくなった。
「あの、私もう仕事があるんで良いですか?」
「ごめんなさい。私、なんか勘違いしていたみたい」
急に大人しく話し方まで変わった与田さんに鳥肌がたった。
私は部屋に向かった。