元カレと別れてから数日後の昼休み。
「椎名さん、2年生の子が呼んでるよ」
友達とお弁当を食べていたあたしに、クラスの子が声をかけてきた。
視線を向けると教室のドアの前に、大人しそうな女の子が立っていた。
「梓、知ってる子?」
一緒にお弁当を食べていた梨沙に尋ねられたけど、顔も名前も知らない子だ。
それなのに、あたしに何の用があるんだろう?
「とりあえず、行ってくる」
不思議に思いつつ席を立ってドアの前まで行くと、
「あなたが椎名先輩ですか?」
大人しそうな見た目とは裏腹な冷たい声で言われた。
「そうだけど、あたしに何の用?」
初めて会う後輩に怒られる覚えなんてないんだけど。
「とぼけないで下さい! 私がアキラ先輩の彼女だって知ってたくせに!」
「え?」
突然声を荒らげて怒鳴られて、教室にいたみんなが何事かとあたしの方に注目している。
“アキラ”という名前でようやく事情を察知したあたしは、
「ちょっと、場所変えよう」
慌てて女の子の腕を掴んで教室を出た。