【Side 慧】
「さあ、それでは続いての主張です。3年3組の椎名 梓さん、お願いします」
文化祭を終えたあとの後夜祭で始まった今年の目玉企画であるJKの主張。
司会の生徒から飛び出した名前に驚いて思わずステージの方を見る。
今の、聞き間違いじゃないよな…。
本人からは何も聞いていなかったけど、出場応募していたのか。
何を言うのか緊張しながら、ステージに立つ梓を見つめる。
「3年3組、椎名梓です。あたしは、同じクラスの守谷とつきあってます!」
突然飛び出した自分の名前に驚いた。
「椎名さん、おまえに何か言うつもりじゃね?」
隣にいたクラスの男子にそう声をかけられて、何を言われるんだろうと急に緊張してきた。
「わたしは、安東と違って見た目派手だし、勉強もできないし、まだ進路も決まってないし、いつも強がってばかりだけど…っ」
途中で言葉に詰まってしまった椎名さんに、あちこちから「頑張れ」の声が上がる。
泣きそうになりながら必死に何かを伝えようとしている彼女の姿に、嬉しいというよりは胸がしめつけられるような気がした。