安東はまだ買い物終わってないのかな。
入口付近を探してみたけど、いない。
中に入って安東の姿を探すと……いた。
受験参考書のコーナーで見つけた後ろ姿に声をかけようとして、一瞬ためらった。
ひとりでいると思っていたはずの安東の隣に見覚えのない女の人がいて、しかも楽しそうに何か話していたから。
「安東?」
思い切って声をかけると、同時にふたりが振り向いた。
「買い物終わったんだ?」
「うん」
ちょっと居心地悪く感じながら頷くと、
「この子が慧くんの彼女さん?」
隣にいた女の人が安東に尋ねて、安東が頷く。
“慧くん”って名前呼びしてるなんて、かなり親しい関係?
しかもあたしに向けられた視線がどことなくバカにしているように思えて、直感的にこの人苦手だと思った。
「初めまして、北見麗です。私は慧くんのいとこなの」
いとこか。だから親しげなんだ。
それにしても…あたしとは全然違ってお上品な感じの綺麗な人だ。
サラサラのストレートロングな黒髪に、雪みたいに白くて綺麗な肌。