再び静かになった空間に、まるでタイミングを見計らったようにウグイスの鳴き声が響いたその瞬間。

「何がホーホケキョよ。こっちはフラれてムカついてるって言うのに!」

椎名さんが、苛立ったような大きな声で叫んだ。

「鳥に八つ当たりするなよ」

思わず口に出すと、

「誰?」

周りを見回して、椎名さんが俺の存在に気づいた。

「っていうか、なんで安東がこんなところにいるの?」

「ここは静かに本を読んで過ごせるから」

質問に答えると、椎名さんは俺が持っている文庫本に視線を移した。

今更隠しても無駄だし、はっきり言ってしまおう。

「まさか椎名さんがフラれるところを見ることになるなんて思わなかったけど」

俺の言葉に、一瞬椎名さんが不機嫌そうな表情を浮かべた。

「じゃあ、俺は教室戻るから」

聞こえてきた予鈴を合図に、俺はそのまま校舎の方へと歩き出した。