不意打ちにそんなことを言われて、途端に鼓動が速くなる。

教室では本ばかり読んでて静かなくせに、ふたりきりの時はこんな風にドキドキさせるなんて、本当にずるい。

「今、照れたでしょ」

「照れてない」

「ウソ。声でわかる」

やっぱり安東には意地張っても無駄だ。

「だって、急にそんなこと言われたら恥ずかしいでしょ!」

「はいはい」

安東のちょっと意地悪そうな笑顔が見えなくても想像できる。

「あ、じゃあ予備校の授業始まる時間だから」

「え、予備校あったの?」

「うん。また連絡する」

そう言われて、そのまま通話が切れた。

わざわざ予備校の授業の前に電話してくれたんだ。

そう思ったら、また嬉しさがこみあげてくる。

ねぇ、安東。

あたし、いつのまにか自分でも信じられないくらい安東のこと好きになってるよ。