「なんとなく、椎名さんが寂しがってるんじゃないかなって思って」

「…え…?」

「帰ってもいつも家にひとりだって前に言ってたから」

前に言ってたこと、覚えてくれてたんだ。

「よく覚えてたねそんなこと」

「そりゃ覚えてるよ。好きな子の言ってたことなら」

“好きな子”って言葉に、思わず反応してしまう。

こんな何気ないことが嬉しいなんて。

「やっぱり寂しかった?」

スマホ越しに聞こえた、ちょっとからかうような安東の声。

「別に寂しくなんかないよ」

「ホントに?」

「ホントに。寂しいなんて、ありえないから」

なんとなく負けた気がして悔しくていつものように言い返す。

「そっか」

ちょっと残念そうな安東の声。

「俺は寂しかったけどな」

「…え…っ」