「焦らなくても大丈夫だから」
安東が何気なく言ってくれたその一言が、もやもやしていた気持を軽くしてくれた。
ホントは、心のどこかで不安だったから。
早く決めなくちゃって焦っていたから。
何も考えてません、まだ決めてません、なんてこの時期にそんなこと言っていられないのも本当はわかってる。
だけど、だからと言ってどうしたらいいのかわからなくて、何も行動に移せなくて。
そんな自分に自分で一番苛立っていたんだ。
「じゃあ、また連絡するから」
帰り際、家の前まで送ってくれた安東。
「うん。待ってる」
名残惜しい気持ちで後姿を見送って、家の中に入る。
誰もいない真っ暗で静かな部屋。
父親が帰ってくるのはどうせ今日も夜遅くだろうし。
夕飯どうしようかな。
今から作る気にはなれないし、この暑い中何か買いに行くのもめんどくさい。
いっそのこと安東と時間潰して食べてきちゃえば良かったかな。
そんなことを考えながら部屋の電気とテレビをつけると、バラエティ番組の賑やかな笑い声が響く。