「美容系か。そっか。そんな道もあるんだ」

初めて知った、というような表情でそうつぶやいた椎名さん。

きっと今までどんな分野があるかも知らなかったんだろう。

「焦らなくても大丈夫だから。自分のペースで調べて考えてみなよ」

みんなが進路を決め始めて動き始める夏。

まだ何も見えないのはすごく不安だろうし、焦る気持ちもあると思うけど。

これから少しずつ知って考えていけばいい。

「……ありがと……」

小さな声でうつむきながらそう口にした椎名さんの表情は、ほんの少しだけ泣きそうに見えた。