「まだこれから夏休みなんだし。自分は何が好きで、何が嫌いかだけでも考えてみれば?みんな進学しなくちゃいけないわけじゃないし、答えはひとつじゃないから。それに、違ったと思えばまたやり直せばいい。今人生の全てが決まるわけじゃないんだから」
「……なんか、安東ってすごいね」
心底感心したように、梓がつぶやいた。
別にそんなすごいことを言ったつもりなんて全然なくて、ただ思ったことを言っただけなんだけど。
「先生に、“あなたが安東くんとつきあうことでいい方に変わるといいんだけどね”って言われたんだけど…なんか意味分かった気がする」
「そんなこと言われたんだ?」
先生もつきあってること知ってるのか…。
「うん。でも、怒られると思ったのに意外といい先生だった」
「意外とってなんだよ」
「だって生活指導担当でめちゃ厳しいって有名だったし。あたしも1年の時から結構注意されてたし」
確かに1年の時から目立つ外見だったから、色々注意はされてただろうな。