「俺は、椎名さんとつきあってるから」
もう一度、さっきよりはっきりと力強く響いた安東の声。
そして一瞬の間のあと、教室中から歓声なのか悲鳴なのかわからない声が響いた。
「すげ~公開告白の次は交際宣言かよ」
「おまえ、意外と根性あるなぁ」
「男として見直したぜ!」
男子達は意外にも安東の言葉を聞いて大絶賛。
「ホントにあのふたりつき合ってるの?」
「信じられない組み合わせ」
「でも、安東がちょ~っとだけイケメンに見えてきたかも」
「うそ~ないない! 安東も結局見た目だけで女選んでるんじゃん」
女子達は…まぁ、予想通りの反応。
「ちょっと、安東の悪口言ったらあたしが許さないからね」
声が聞こえてきた方に視線を向けて言うと、数人の女子と一瞬目が合った。
けれど、バツが悪そうにすぐに視線を逸らした。
“見た目だけ”なんて、そんなことない。
安東は、驚くほどあたしのことをよく見てわかってくれている。