翌朝、教室に入るとまた鋭い視線を感じた。
一部の女子達がヒソヒソと何かを話してる。
「“安東のことなんて好きじゃない”って言ってたくせにね」
「結局地味男にも手出すなんて最悪」
聞こえないように小声で話してるつもりかもしれないけど、しっかり聞こえてるからね。
「安東も女の趣味悪いよねぇ」
はい? 今のはかなりっていうかすごく許せない発言だ。
あたしのことを悪く言うのはかまわないけど、安東のことまで中傷するのはおかしくない?
「ちょっと…」
我慢できずにあたしが反論しようとした時、安東が教室に入って来た。
「なぁ、安東マジで椎名とつきあってんの?」
「昨日教室でイチャついてたらしいじゃん」
途端に男子達が安東を取り囲んで興味津々に質問攻めにしている。
昨日ってことは、誰か覗いてた人がいるのかな。
あたしのせいで安東までからかわれたりバカにされるのはイヤだ。
「ねぇ、いい加減に…「つきあってるんだからイチャついて何が悪いんだよ」
あたしが言いかけた言葉は、安東の声にかき消された。