最初から本気じゃないってわかってたから、別に悲しくなんてないし。

だから別に泣きたくなんて……。

そう思っているのに、なぜか視界がぼやけていく。

遠ざかっていく安東の後ろ姿が、ゆらゆら揺れている。

悲しいのか、悔しいのか、自分でもよくわからない。

だけど、元カレの前では決して見せなかった涙が、今になって溢れてくる。

本当は、わかってるんだ。

いつもこういう恋しか出来ない自分が悔しくて、もどかしくて、どうしたらいいかわからないってこと。

“泣きそうな顔してる”

あんな、ほとんど話したこともない地味男子に見抜かれるなんて。

「……なんか、ムカつく」

結局、あたしは5時間目の授業をサボった。