「まさか安東にあんな度胸あるなんて思わなかったよ」
あんな風にみんなの前ではっきり言える強さが、安東にあったなんて。
すごく驚いたけど、本当は嬉しかったんだ。
「ホント、変なヤツだよね。なんであたしのことなんか……」
安東は、こんなあたしのこと、まだ好きでいてくれてる…?
本当は、素直にそう訊きたいのに。
やっぱり上手く言葉に出来ない。
だけど、安東はそんなあたしの気持ちを見透かしたように、
「そういう素直になれないところ、好きだよ」
優しくそう言って笑ったんだ。
なんでだろう。
安東のその一言が嬉しくて仕方ないなんて。
なんだか自分が自分じゃなくなっていくみたい。
あたしにも、こんな気持ちあったんだ。
でも、強がりで意地っ張りなあたしは、やっぱりそう簡単に素直にはなれそうもない。
「……責任とってよ」
「え?」
「あたしのことこんなに泣かせた責任、とってよね」
「喜んで」
安東はそう言って笑うと、あたしの涙をそっと指で拭ってくれた。
素直になれない不器用なあたしの恋は、始まったばかり。