「まさか安東にあんな度胸あるなんて思わなかったよ」
言いながら、椎名さんが笑った。
その笑顔は、涙で歪んでいたけど。
やっぱり俺は椎名さんの笑顔が見たいんだって、改めて思った。
「ホント、変なヤツだよね。なんであたしのことなんか……」
椎名さんが、いつもの強気な口調に戻って呆れたようにつぶやいた。
いつも強がって意地張ってばかりで。
人前で辛いところや弱いところを見せない。
いつだって、気持ちと言葉が裏腹な不器用な君だから。
あの時の言葉も、本心じゃない。
そう信じたい。
だから、もう一度、伝えさせて。
「そういう素直になれないところ、好きだよ」