ちょうど今登校してきたらしい。

「そういう言い方、やめろよ! 椎名さんはそんな人じゃない」

いつも穏やかな安東が、珍しく怒っている。

「うわ~そんなムキになるってことは、もしかしてマジで椎名に惚れてんの?」

近くにいた男子が、茶化すように安東に聞いた。

ちょっと、やめてよ。

安東があたしのことなんて好きなわけ―

「そうだよ」

――え? うそ、でしょ?

「すげ~公開告白じゃん」

「地味男子のくせにやるなぁ」

「椎名、どうすんの?」

「男なら誰でもいいんだから、もちろんOKじゃね?」

さっきよりさらに騒ぎだして、みんな好き勝手なことを言っている。

やめて。やめてよ。

「うるさい! あたしは、安東のことなんて好きじゃない!」

あたしの言葉に、みんなが一斉に静かになって。

言ってしまってから、まずいと思った。

違う。こんな言い方するつもりなんてなかった。