それから、なぜかあたしは裏庭で安東と一緒に昼休みを過ごすようになった。
と言っても、お互い会話はあまりなく、安東は初めて会った時と同じ難しそうな文庫本を読んでいる。
「ねぇ、その本そんなに面白い?」
「面白いって言うか…勉強になるよ。読んでみる?」
そう言いながら本を手渡されてページをめくってみたけど、
「うわ、文字びっしりだし。無理、無理」
案の定、1ページ目を見ただけでギブアップしてしまった。
「そんなに本嫌い?」
返した本をもう一度開きながら、安東が笑う。
「嫌い。っていうか、あたしマンガしか読まないし」
「そっか」
即答したあたしに、穂積は少し残念そうな表情を浮かべた。
「安東は、なんでそんなに本好きなの?」
何気なく尋ねると、安東は少し考え込んでから答えた。
「違う自分になれるから、かな」
「違う自分?」