それでも俺は彼女と過ごす時間が欲しくて、必死に言葉を続けた。

「わかるよ、この前の椎名さん見てれば。ホントは泣きたいのに泣けないし、辛いのに平気なフリしてる。気持ちを素直に表現できないタイプでしょ」

本当は、この前だけじゃなくて、ずっと前から見てたけど。

今そんなことを言ったらさすがに引かれそうだから、そこは黙っておこう。

「勝手にあたしの性格分析しないでよ」

「でも、当たってるでしょ?」

俺の言葉に、椎名さんが一瞬悔しそうな表情を浮かべて。

そして、少しの沈黙の後、諦めたように言った。

「そんなに来てほしければ、来てあげてもいいけど」

「なんでそんな上から目線?」

「気持ちを素直に表現できないタイプだから?」

そう言いながら、やっと椎名さんが笑ってくれた。

その笑顔はまだぎこちないものだったけど、それでも俺に笑顔を向けてくれたことがすごく嬉しかったんだ。