今朝から、いつもと教室の空気が違うような気はしていたけれど。

昨日の昼休みに修羅場があったということを、ウワサ好きの女子達が楽しそうに話している。

俺はいつも教室にいないから、知らなかった。

でも、これだけみんなが騒げば、椎名さんも居心地が悪いだろう。

昼休み、椎名さんはいつも一緒に過ごしている女子と会話もせずさっさと教室を出ていった。

朝から絶えない陰口、向けられる冷たい視線にさすがの彼女も教室の中で過ごすのは辛いのかもしれない。

どこへ行くつもりなのかはわからない。

だけど、もしかしたら……。

そんな予感と小さな期待を胸に、俺はいつも通りの場所へ向かった。

そして、そこには本当に彼女がいた。

「椎名さん?」

名前を呼ぶと彼女は顔を上げて、

「ごめん、もう食べ終わったから」

慌てて立ちあがろうとした。

「いいよ、そこ座ってて」

別に、ここは俺だけの場所じゃないし。

それに、こうして椎名さんと会えることを本当は期待してたから。