【Side 慧】


いつからだろう。

椎名さんの姿を探すようになったのは。

入学当時から、目立つ存在だった彼女。

明るく染められた髪に、着崩した制服。

整った顔立ちをさらに際立たせるメイク。

絶えない恋愛絡みのウワサ。

次々と変わっていく彼氏。

椎名さんは、あっというまに校内で有名になった。

男子からは、「つきあってみたい美人系女子」と言われていて。

女子からは、「派手で男遊びが激しい」と反感を買っていて。

教師からは、「言葉がキツいし生意気だ」と注意されている。

だけどいつも堂々としていて、自分の好きなように生きている。

そんな姿が俺には羨ましく思えて、眩しく見えて。

気がついたら、椎名さんの姿を目で追うようになっていた。

「今度は2年生の子の彼氏に手を出したらしいよ」

「ホント懲りないね、あの子」

「でもさ、やっぱり男って見た目が綺麗なら性格悪くてもいいのかなぁ
?」

不意に聞こえてきたクラスの女子達の会話。