人が来ない静かな場所と考えて思いついたのは、学校の裏庭だった。
そこは、予想通り誰もいなくて、静かだった。
5月の爽やかな風が、桜の木の葉を揺らしている。
その下にある古ぼけたベンチには、誰もいなくて。
あたしはそのベンチに座って、お弁当を食べることにした。
安東は昼休みいつもここにいるわけじゃないんだ。
ふとそんなことを考えている自分に驚いた。
別にあいつのことなんてどうでもいいし、誰もいない方が静かでのんびりできるし。
それに、あいつがいるかもなんて思ってここに来たワケじゃないし。
なんて、誰に対してなのかわからない、まるで言い訳みたいなことを考えていたその時。
「椎名さん?」
ウワサをすればなんとやら(正確には心の中で考えてただけだけど)、名前を呼ばれて視線を向けると、安東がいた。
「ごめん、もう食べ終わったから」
慌てて席を立とうとしたあたしに、
「いいよ、そこ座ってて」
安東は穏やかな口調で言った。