「梓、別れよう」
春うらら、って言葉がピッタリな穏やかな春の午後。
あたしは学校の裏庭で、付き合って3ヶ月経つ彼氏から別れの一言を告げられた。
「なんで?」
まず最初に出たのは、その一言だった。
「ん~他に好きな子出来たから?」
こっちが訊いてるのに、疑問形で返す彼。
わかってたよ。
最初から、あたしは本命じゃなかったってことくらい。
ただ、もうあたしに飽きただけでしょ?
やっぱり本命の方が良かったってことでしょ?
“他に好きな子ができたから”じゃない。
あたしの方が最初から浮気相手にされてただけだ。
「あっそ。あたしも別にあんたのこともう好きじゃないし。これでバイバイだね」
「……あ、ああ」
あたしがあっさりと別れを承諾したことに驚いたのか、彼は戸惑ったような表情を浮かべると、
「じゃあ…話は終わったから戻るわ」
そう言って踵を返し、校舎の方へ向かって歩き出した。
誰もいなくなった裏庭に、ウグイスの鳴き声が響く。