〜 休憩時間 〜


クラスのあちこちではもうグループができ始めていた。


もちろんの事、私は話しかけてももらえなかった。


「 あ、あのっ、霧島さんっ! 」


黒髪おさげのメガネをかけた少女が私に話しかけてきてくれた。


確か…


澄美「 多田野苺さん、よね? 」 


そう聞くと、彼女は嬉しそうに顔をほころばせた。


苺「 覚えていてくれたんですね! 」


澄美「 まぁ、クラスメイト…だし。 」


苺「 わ、私と、お友達になってくれますか! 」



と聞いてくる多田野さん。


何で私なのだろう。


澄美「 …うん。 」


苺「 っ! 」パァアッ


表情がコロコロ変わる…


面白いなぁ。


澄美「 …でも、私といっしょにいても、面白くないと思うよ。 」


ほら私無愛想だし、と付け足す。


苺「 そ、そんな事ないと思いますっ!自己紹介のとき思ったのですが、本当は冷たい人なんかじゃないんじゃないかって、 」


いつも言われる。


澄美ちゃんは冷たそうだから近寄れない。


澄美ちゃんは私達と一緒にいてもつまらなそうだから嫌だ。


冷たそう、つまらなさそう。


勝手な思い込みでいつも周りから一線引かれていた。


でも、彼女は違う。


ちゃんと、本当のわたしと向き合おうとしてくれている。


澄美「 ありがとう。 」フワッ


あれ、


今私、


笑えた…


苺「 笑顔、とっても可愛いです! 」


澄美「 …敬語じゃなくていいよ。それに、澄美って呼んで。 」


苺「 うんっ!私のことも苺って呼んで! 」


苺…


彼女にピッタリの可愛らしい名前だ。


しばらくすると苺と私はすっかり打ち解けることができた。


苺「 次はクラスの交流会だって! 」


楽しみだね、とニコニコしながら言う彼女。


和む…


交流会…雫くんと話せたら良いなぁ。




〜 交流会 〜

佐久間「 は~いじゃあ交流会はじめます!皆まだ話したことない人たちとも話しましょう〜 」


と、佐久間先生が言うと、皆いつものメンバーでグループでかたまった。


雫「 おーいっ!多田野さん達もこっち来なよ! 」


と、雫くんが私達に遠くから呼びかけてきてくれた。


友莉亜「 えー、まじで言ってる?太陽〜 」


と、クスクス笑いながらこちらを見てくる雛野友莉亜さん。


感じ悪ー


雫「 お前、何で笑うの?クラスメイトじゃん。 」


やっぱり、雫くんはいつも真っすぐでかっこいい。


仲がいい人とか関係なく、ダメなときはズバッと言う。


すごいなぁ…


友莉亜「 むぅ… 」


雫「 おーい!こっち来いよ〜! 」


苺「 雫くん、いい人だね 」


彼は私のヒーロー


でも、


私だけのヒーローでは、ない。


皆に優しくて、皆に好かれている雫くん。


やっぱり、私とは住む世界が違う。


澄美「 …そうだね。 」


彼が私だけのヒーローでいてほしいなんて、


こんな汚い感情、しまっておこう。


雫「 んじゃあ改めて自己紹介しようぜ!俺は雫太陽! 」


と、元気そうに話す雫くん。


それに続くように


知久馬「 僕、知久馬雄心( ちくまゆうしん ) ! 」


可愛らしい男の子だ。


髪の毛はふわふわでまるで犬の毛みたい。


氷「 …氷雪音 」


あ、さっきの美少年。


氷くんはこちらを見るとあからさまに眉間にシワを寄せた。


なんか腹立つな…


友莉亜「 雛野友莉亜。 」


可愛らしい女の子だがどこか刺々しい。


苺「 えとっ、多田野苺ですっ! 」


澄美「 霧島澄美、です 。 」


やばい、雫くんがいるから緊張する。


その後沈黙が続き、雫くんが話を切り出した。


雫「 俺最近コーラにハマってんだけど皆好きな飲みもんあるか? 」


会話の切り出し方がうまいな…


知久馬「 ぼくバナナオレ〜! 」


飲んでそうだな…


友莉亜「 私はタピオカに最近ハマってる〜 」


JKだ… 


氷「 僕は、緑茶。 」


なんか、しっくり来るな。


苺「 わ、私はカフェオレです。 」


あ、私か。


私がいつも飲んでるのは、


澄美「 アイスコーヒーのホットです 」


友莉亜「 ブッ 」


と、友莉亜さんが吹き出した。


他の人達も笑うのを必死にこらえている。


そんなに変なことを言っただろうか。


澄美「 ??? 」


知久馬「 澄美ちゃんもしかして天然〜? 」


天然??


天然パーマに見えたのだろうか


澄美「 いえ、ストレートですが。 」


と、私が言うと


友莉亜「 ブッ 」


と、またまた吹き出す友莉亜さん。


彼女、もしかして、


…ゲラなのだろうか。


友莉亜「 ふっ、あんたおもしろw 」


と、脇腹を抱え、目尻にうっすら笑い涙を溜めて私に話しかけてきた。


友莉亜「 私友莉亜。友莉亜って呼んでいいわよ!特別よ! 」


と、頬をほんのり染めてそっぽを向きながらぶっきらぼうに言ってきた。


なんだ、感じの悪い人だと思っていたら、全然いい人だった。


ひねくれていたのは私の考え方か。


澄美「 …うん。よろしく。 」


友莉亜「 そっちのおさげも、よろしく。 」


苺「 あっ、苺って呼んでください! 」


友莉亜「 ふん、特別よ 」


ツンデレだ…


雫「 なぁ、思ってたんだけど、霧島ってやっぱあの霧島か?! 」


雫くんがガタッと椅子から立ち上がって私の方に身を乗り出してきた。


雫「 公園の! 」


やっぱり…


澄美「 覚えててくれたんだ…。 」


雫「 おう! 」


やっぱり、彼は変わらない…


いつでも私の心を溶かすようなあったかいことを言ってくれる


友莉亜「 ふぅ〜ん、感動の再会、ってやつ? 」


雫「 まぁそんなとこ!霧島、元気してたか?あれから辛いこととかなかったか?? 」


雫くんは、相変わらず優しい。


澄美「 大丈夫だよ。 」


そう言うと、雫くんはホッとしたような表情を見せた。


人のためにこんな表情ができるなんて、


なんて優しいんだろう…。


友莉亜「 苺!澄美!今日の放課後親睦会として買い物行くわよ! 」


放課後に友達と寄り道…


したことがない。


苺「 はいっ! 」


澄美「 …うん。 」


友莉亜「 太陽!雄心!雪音!あんたらも荷物持ちで来なさいよね! 」


荷物持ちなんだ。


でも、雫くんが来るなら、少しうれしいかも、


雫「 え〜!俺は行く! 」


!!


知久馬「 じゃあ僕も行く〜!雪音も行こうよ!決定ね!! 」


氷「 何で僕まで… 」


と言いながらも結局、


いやいやもついてきてくれた


〜 放課後 〜


友莉亜「 じゃあ、行くわよっ!苺!澄美! 」


友莉亜の目が輝いていた。


買い物が好きなのだろうか。


澄美「 …おー 」


苺「 おーっ! 」


苺はこういうのにあこがれていたのだろうか、友莉亜と同様、目を輝かせていた。


私は…


澄美「 人多すぎて酔いそう、死にそう… 」


何で平日なのにこんなに人が多いわけ??


友莉亜「 あ、この服澄美に似合いそうね。どう? 」


と、友莉亜が雫くん達に話をふった


雫「 おー!いいじゃん!霧島の落ち着いた雰囲気に合っててめっちゃかわいいと思うぞ! 」


雫くんのこれは無自覚なのだろうか。


澄美「 じゃ、じゃあ、私、これにするよ…。 」


友莉亜「 へーへーほーんふーんへー?? 」 


と言いながら友莉亜がニヤニヤしてこちらを見てくる。


同じく苺もこちらをニヤニヤしながら見てきている。


澄美「 …何。 」


友莉亜「 そういうことだったのねぇ 」


何を言ってるんだ…??


そしてこそっと私に耳打ちしてきた。


友莉亜「 澄美、太陽の事、好きなんでしょう? 」


私が、雫くんのことを、好き…?


澄美「 …そんなわけないでしょ。 」


そんな事ないと思う。


私が彼に抱いている『 特別な感情 』というのは、恋とかそういうのではない。


なんというのだろう。


言葉ではうまく表現できない。


けれど、とっても大切な存在。


この気持ちは恋とは呼ばないと思う。


友莉亜「 ちぇっ、つまんないの。 」


って、あ、


もうこんな時間。


澄美「 ごめん、この後塾あるからこれだけ買ったらもう塾行くね。 」


雫くんが褒めてくれた服…


これだけは買っておこう。


着るかはわからないけれど…


友莉亜「 あんた塾行ってるの?!高校始まったばっかりなのに、真面目ね。 」


私は勉強をしないと成績が取れないから、しっかりと勉強しておかないと…


澄美「 じゃあ、私もう行くね。 」


友莉亜「 はーい。頑張りなさいよ。 」


誰目線…?


でも、今日は1日、楽しかったな。


初めて放課後に寄り道して、


友達と服を選んで、


充実した1日だった。


でもこんな事ができたのは、きっと星ノ宮高校に来たからだと思う。


お母さんに言われた通りにお母さんに勧められた高校に通っていたら、私は何も思わず、ただお母さんの言う通りに勉強して、


卒業後はお母さんの言う通りに仕事に就いていたんだと思う。


でも、自分の意思でこの高校に来て、私も少しは変われたと思う。