出会いは突然。まるで、春の訪れのよう。

目の前のキラキラに支配される。

凍てついた氷のような心が、君の声一つで溶ける。









あの日は、雨だった。


土砂降りの、冷たい雨。


初めてお母さんと喧嘩をした日。


思わず家を飛び出した。


雨は、嫌いだけど、


―その日が雨で良かったと思った。


雨が降っていれば泣いていても気付かれないから。


でも、


彼は違った。


彼は私が泣いているのに気が付き声をかけてきた。


『 大丈夫?…って泣いてんのか?! 』


って、ちょっとおどおどしていた。


その後、彼は近くの公園で私の話を聞いてくれた。


泣きじゃくりながらだったから、きっと嗚咽で話が長かった。


でも、彼は嫌な顔一つせず話を聞いてくれた。


何も言わず、ただ、


ずっと私の顔をちゃんと見て話を聞いてくれた。


話が終わった後、彼は手に持っていた漫画を見せてくれた。


それはクラスの男子がよく話していた、最近流行っていた戦闘系の漫画だった。


そして彼は漫画を開き、私に見せてきた。


「 ヒーローってかっけえよな。困ってる人がいたらぜってぇ助けるんだぜ 」


「 俺は強くねえけど、強いだけがヒーローじゃないだろ!守りてえやつを守るのがヒーローだ!だから俺がお前のヒーローになってやる!」


あの日、あの瞬間から


君は私のヒーロー。


それから私達は頻繁に公園で会うようになった。


一緒に漫画を読んだり、


勉強が苦手な彼に勉強を教えてあげたり、


話を聞いてもらったり、


学校生活はつまらなかったけど、


彼と話す時間はとっても楽しくて、短く思えて


とっても楽しかった。