「めぐッ…」

「せんせーは絶対にメグのものにはならない。メグの世界はもう救われない。全部サヨちゃんのせい」

「私の?」

「ずるいよ。最初からこの場所に生まれたからってメグよりうんと与えられた時間があって。せんせーを独り占めして。メグはせんせーが居なきゃ死んじゃうのに。でもね、安心して。サヨちゃんがこれから先、こんな風に人に恨まれなくていいようにメグがここで断ち切ってあげる」

「ね…ちゃんと話そう?こんなの間違ってる…絶対におかしいよ」

「だから、なぁに?間違ってたってもうどうでもいいの。正しいことなんてメグがせんせーを好きってことと、害悪を消してあげるってことだけ。それしかないんだよ」

「メグちゃん!こんなことしたってナツくんは喜ばない!ナツくんを本気で愛してるならこんなことしないで…」

「″こんなこと″って、サヨちゃんを殺すこと?サヨちゃんが死んじゃうからせんせーは苦しむの?全部サヨちゃんのことばっかだね。ますます胸糞悪いな。ありがとね、サヨちゃん」

「え…」

「サヨちゃんが喋れば喋るだけ、ちゃんとサヨちゃんを殺せそう」

「メッ…………」

スッと引いたサヨちゃんの白い首。
細いアスパラガスみたいに簡単に裂けた。

面白いくらい噴き上がる血飛沫。
白い壁も浴槽も、透明だった水も真っ赤。

ワンピースの赤はもっと濃くなった。

「サヨちゃん」

「カッ……ハ……」

「ねぇ、サヨちゃん」

玄関のドアが開けられる音がした。

せんせーだ。
サヨちゃんが来ていいよって連絡していたのだろう。

足音がこっちに近づいてくる。

「サヨちゃん、あとちょっと足りなかったね。最期にせんせーに逢えなかったね」

ヒューヒュー音がする。
浴槽に溜めた水の中に
くりんってひっくり返ったサヨちゃん。

真っ赤なワンピースがゆらゆらと揺れる。
金魚みたい。