サヨちゃんは黙り込んで
ただメグの顔を見つめていた。

何度かくちびるを動かして何かを言おうとしたけれど
音には鳴らなくて、ただかすれた声で
「なんの冗談?」って言って、苦笑した。

「じょーだんなんかじゃないよ」

「本当だとしたらなんで…」

「愛されなかったから」

「愛されなかった?」

「愛されなかっただけならまだ我慢できた。でもね、メグはずーっとあいつらのサンドバッグで、ストレスの捌け口で、だからいい加減鬱陶しくなっちゃって殺しちゃった」

「虐待…されてたの?」

「ちょー仲良しの夫婦だった。若かったの。突然メグを妊娠しちゃって、元々ママは産みたくなかったんだって。でもおじいちゃん達に説得されて産んでみたけどやっぱり愛せなかった。ママはパパを愛してるだけなのにメグが間に入り込んで邪魔するし、うるさいし、放っておきたいけどオブジェにするにしてもワーワー喚くからそうもいかなくて。だったらせめてメグに存在価値を与えよう。そうだ、イラついた時にこいつをサンドバッグにすればいいんだ。こいつをイジめれば気分も晴れるし、って」

「そんな…」

「妄想じゃなくてね。物心ついた頃から″お前の唯一の存在価値だよ″って、まるで絵本を読み聞かせるみたいに言われ続けてた。ママやパパのそんな声が鼓膜にこびりついて耳鳴りみたいに鳴り続けるの。早く止めないともう本当に壊れちゃうって思った。だからもう何も言えなくしてやろうと思ってね…」

「…」