「サヨちゃんごめんね。一匹しか取れなかった」

「ううん、すっごく嬉しいよ!」

「いいよ、いいよ。おじさん、美人には弱いから。好きなの持っていって」

「いいんですか?」

「もちろんだ。可愛がってあげてな」

「わぁー、ありがとうございます!」

メグが指差した子を、
すくった子と一緒にポリ袋に入れてくれた。

ちゃぷん、って揺れるポリ袋は
ちょっと重たかった。

「はい。どうぞ」

「本当に貰っていいの?」

「その為にやったんだから」

「ありがとう。大事にするね」

「ねぇ、サヨちゃんのおうち、今から行っちゃダメかな?」

「どうして?」

「早く水槽に移してあげなきゃ弱っちゃうでしょ?」

「でも花火は…」

「命が優先!」

「あはは。そうだね。実は今日ね、うち誰も居ないの」

「そうなの?」

「母と父はね、昨日から父の実家に帰ってるんだ。私は絶対にメグちゃんとお祭りに来たかったから残ったの」

「大丈夫だったの?」

「うん。それでね、驚かそうと思って黙ってたんだけど…」

「うん」

「あのね、学校のみんなには内緒だよ?今日はナツくんが泊まりに来てくれることになってるの。母達もナツくんなら安心だって。メグちゃんも誘ってみようよって言ってくれてたじゃない?母の許可も貰えたし、だから帰ったらナツくんに来てもらおうよ」

「そう、なんだ…じゃあメグが帰ったらサヨちゃん達、二人っきりってことぉー?」

「やだ…茶化さないでよ」

「サヨちゃん。せんせーだって男だよ?」

「変なこと言わないで」

「変なことってなに?せんせーのこと、聖人君子かなにかとでも思ってるの?」

「もうやめて……。ナツくんはいとこなんだよ」

こういう時だけ純情ぶって
関係性を振りかざす。

そのいとこ同士で恋愛してるのは
お前らだろ。

心配しなくても大丈夫。
メグがちゃーんと壊してあげるから。

今だけは理解者のふりをして
笑っていてあげる。