「サヨちゃん、きっと気が動転しててあり得ないことしちゃったのかもね?ごめんね。全部メグのせいだよね。メグがあんなことしちゃったから…」

「違うのメグちゃん…私のほうこそごめんなさい。もうメグちゃんのこと絶対に疑ったりしない。絶対にしないから…だからお願い、許して…」

″だからお願い、許して″…?

口角がムズムズと疼いて仕方ない。
吹き出しそうなのをこらえるのって
こんなに大変なんだ。
噛み締めた奥歯が痛い。

サヨちゃんが百パーセント正しくて
メグが百億パーセントクズの悪人なのに。

「ううん。仲直り、したいな」

「いいの…?」

「サヨちゃんこそいいの?」

「もちろんだよ…。こんなこと言ったのにメグちゃんは本当に優しいね」

「だってサヨちゃんのことが好きだから」

サヨちゃんは目にいっぱい溜めていた涙を手の甲で拭った。

「ありがとう」

「サヨちゃん。またリップ塗ってあげるね。仲直りの印」

にっこり笑うサヨちゃん。

朝のホームルームを告げるチャイムと同時に
教室に入ってくるせんせー。

ねぇ。
今度は金魚よりも、もっともっと真っ赤なリップを塗ってあげる。

赤くて黒い、
地獄を。