サヨちゃんとお母さんの手で
アクアリウムはまた、
サヨちゃんのお部屋の定位置に戻された。

メグ達が飲んだジュースのグラスと
クッキーが乗せられていたお皿を持って
お母さんはリビングに戻っていった。

「サヨちゃん。ほんとにごめんね。大切な金魚なのに」

「ううん。もう何回も謝ってくれたじゃん。メグちゃんだけのせいじゃないよ。私も渡し方が悪かったと思うし」

メグ″だけ″ってなに?

サヨちゃんだけのせいだよ。

サヨちゃんがことごとくメグの大事なものを奪っていくから
分からせてあげたんでしょ。

サヨちゃんが生まれた瞬間に
せんせーとの未来を約束されていたんなら
これから先をメグは全部壊したい。

だってそんなの不公平すぎる。
なんで十五年分のハンデを背負わなきゃいけないの?

せんせーの隣は絶対に
メグが一番似合うのに。

「大丈夫かな、金魚」

「大丈夫だよ。ほら、気持ち良さそうに泳いでるし」

「ならよかった。今度からは気をつけるね」

「うん。ありがとう、心配してくれて」

サヨちゃんは、ちょー優等生の顔をして笑った。
演技なのかどうかは分からない。

サヨちゃんはどんな時でも
相手の気持ちを優先するんだろうから。

お手洗い行ってくるねって言って、
サヨちゃんは階段を下りていった。