ナツくん、って呼ぶサヨちゃんの口調に
違和感は見当たらない。

呼び慣れた、当たり前になっている口調だった。

「ナツくん、って呼んでるんだぁ?付き合ってんの?」

「ちっ…違うよっ!いとこなの!」

「いとこ?」

「そう。母とナツくんのお父さんがきょうだいで…。母達もね、歳が離れたきょうだいだから私達も一回り違うじゃない?だから小さい時からすごく可愛がってくれて……その、ごめんなさい…」

「なんで謝るの?」

「黙ってたから…」

「別に悪いことしてないじゃん。でもなんで黙ってたの?」

「…私ね、入学前からナツくんが担任になるって教えられてたの。それで、親族同士だってみんなに知られて、贔屓してるとかそんな風に思われたら私が生活しにくくなるだろうから黙っていようってナツくんが言ってくれて…」

「そうだったんだ?優しいんだね」

「うん…」

「それで、サヨちゃんは由良せんせーのことが好きなのね?」

「…」

「金魚まで貰っちゃって。圧勝じゃん」

「そんなことっ…!だって私…現に焦ってるんだよ…。本当はね、小さい時からずっと一緒に居るしいとこだし…ナツくんすごくモテるけど自分が有利だって自惚れてた時期も正直ある…。でもメグちゃんに出逢って、こんなにきれいな子が現れちゃったらもうムリだって思った…」

「嫌味?」

「え…?」

「言ったじゃん。サヨちゃんはきれいだって。それに……あー、なんか納得しちゃった」

「納得?」

「由良せんせー、いっつもサヨちゃんに微笑んだりするよね。他の子だって周りに居るのにサヨちゃんにだけ」

「そんなことないよ!」

「あるから言ってるんだよ?内緒にしてよーとか言ったって特別扱いされてるじゃん。それで私がどーとか言ったってそんなの嫌味だよ」