「後でお茶持って行くからー!」

階段を上がっていく私達の背中に
お母さんが言って、
私は階段の途中で振り返って会釈をした。

サヨちゃんは自分の部屋に私を押し込んで、
ドアをピッタリ閉めてから溜め息を吐いた。

「ごめんね。騒がしい母で」

「きれいな人ね。サヨちゃんのお母さんって感じ」

「え?」

「本当よ。サヨちゃんはきれいだって言ったこと。お世辞でもなんでもない。今までのお友達の中で一番きれい」

「そんなわけ…」

「ねぇ、これ」

「ん?」

メグが近づいた物。

アクアリウムの小さい世界が
サヨちゃんのお部屋の中には存在していた。

白を基調としている、
ホテルみたいに整然としたお部屋の中で
照明の灯りを受けて水面を綺羅つかせたアクアリウムが
天国みたいな空間を醸し出している。

本物じゃない。
作り物の水草の緑色がヤケに浮いている気がした。

それよりも目を引く
二匹の真っ赤な金魚。

微妙に大きさの違う金魚が
連れ添うようにゆったりと気持ち良さそうにヒレを揺らしている。

「きれいね」

「ありがとう。お気に入りなの」

「アクアリウムが?金魚が?」

「どっちも、かな。アクアリウムは後付けだけど」

「金魚が先にここにやってきたの?」

「そう。去年のお祭りの日にね。お迎えして。翌日に急いで水槽を用意して。その間に死んじゃわないかすごく怖かった」