「なんで私の…メグの名前、″輪廻″を例えに出したの？」

「その字はそれが一番伝わりやすいからだよ」

「でも、″輪廻″ってなぁに？一番ちゃんと、解りたいから教えてほしいな、せんせー」

「輪廻転生(りんねてんしょう)。シンプルに言えば生まれ変わるってことだよ」

「命が廻(まわ)ってくやつでしょ？」

「車輪がくるくる回るみたいに命が何度も迴(めぐ)っていくってイメージらしいな」

「絶対に生まれ変わっちゃうのかなぁ。もう死んだままでいたくても」

「まぁ、魂の記憶が受け継がれるわけじゃないからな、たぶん。でも生まれ変わりにはさ、生前の悪行が関係するって言われてるんだ」

「悪行？良いことじゃなくて？」

「どんな悪いことをしてきたかに応じて六道(ろくどう)っていう六つの、どこかの世界に生まれ落ちるって言われてるな。絶対に人間に生まれ変われるわけでもないし」

「悪い行いで判断されるなんて。ほら、よくさぁ″この人は前世でどんな徳を積んでこんなにいい暮らしを手に入れたんだろう″なんて言われる人、いるじゃない？それも本当は関係ないのかなぁ」

「あはは。そうかもな。えーっと…確か六つの世界は、地獄、餓鬼、畜生、修羅、、人間、天上だったかな。その中の地獄、餓鬼、畜生が三悪道って呼ばれてて、特に苦しいんだってさ」

「前世の記憶もその世界に居た記憶も誰も持ってないくせになんでそんなことが分かるの」

「脅しだよ」

「脅し？」

「地獄に逝きたくないなら正しく生きましょうねって」

「その中には恋も無いの？」

「恋？……無いだろうな。苦しみだけの世界だから」

「恋は苦しくないの？」

「さぁ？」

子どもを揶揄うような、大人の目。

きらい。

「さっすが国語のせんせー。詳しいですね。やっぱり小説とかも沢山読むんですか？」

「茶化すなよ」