「由良先生、居ないですか」

「あぁ、クラスの子?ナツキ先生なら教材室よ」

由良先生、じゃなくてナツキ先生って呼んだことに
ちょっとだけ胸がザワってした。

せんせーと何年間一緒に働いているか知らないけれど
そう呼ぶくらいには仲がいいんだ。

ナツキ先生、なんて
もうクラスでも普通に呼ばれているけれど
名字よりも下の名前ってやっぱり距離の近さを感じてしまう。

だってせんせーは、
メグとおんなじ名字の生徒がクラスに居ないから
下の名前では呼べないって言ったんだもん。

はっきりと、教師と生徒としての線引きをされた。
そんな理由が無いとメグの名前は呼べないんだって。

寂しかった。

「教材室?」

「この隣よ」

「ありがとうございます」

「いいえー」

あっさりとした、気さくな先生だった。
それでも胸のモヤモヤは消えない。

あーいう人、
きっとモテるって分かるから。