「さーよーちゃんっ」

「わっ、メグちゃん。びっくりした」

「席、遠くなっちゃったね」

「ほんと…しかも一番前だなんて。私って昔っからくじ運ないの。メグちゃんはいいなぁ。やっぱ残り物には福があるのかな?」

刷り込みって凄い。
ことわざって、まるでおまじないや願掛けに似ている。

″残り物には福がある″だとポジティブだけれど
″坊主憎けりゃ袈裟まで憎い″だとか
″二度ある事は三度ある″だとか

不安を煽るようなことわざは、
むしろ呪詛に近い。

そもそも残り物に福なんて無かったし。

「一番前、いいじゃん。オキニの先生なんてできちゃったりしたらさ、授業のたびにハッピーじゃない?」

「えー。そうだといいけど」

「まだ授業受けてないから分かんないよね。イケメンの先生いるかなー」

「メグちゃんはわざわざ教師にお気に入り作んなくても全学年のアイドルになれるよ」

「アイドル?なにそれ」

「アイドルっていうか、マドンナ?みたいな感じ?」

「そんなの漫画の世界だって」

全学年のマドンナになんてなりたくない。
メグはたった一人。
せんせーだけの恋人になりたい。

せんせーの愛さえ独り占めにできるのなら
全世界から嫌われたっていいのに。