あっという間に隣のサヨちゃんまで順番が回ってきて、
引き終わったサヨちゃんは壊れ物を扱うみたいに両手でくじを包み込みながら
「緊張するね」って、ちょっと強張った笑顔で言った。

正直、隣や前後、近くの席に誰が座ったって
今はどうでもよかった。

まだ入学二日目で、
サヨちゃんと、中学からの同級生以外は″その他大勢″に過ぎない。

顔と名前が一致している人なんて
ほとんど居ない。
のっぺらぼうとおんなじだもん。

メグにとって重要なのは
あの教卓の目の前。
特等席を勝ち取れるかどうかってことだけ。

メグの順番が回ってきて、
受験の合否を見る時よりも心臓がドキドキしている。

残り二枚しか残っていないのに、
教卓の前まで来たメグにせんせーが「慎重にな?」って言った。

ニッて口角を上げて
小学生みたいな顔で笑うせんせー。

あ、

八重歯だ、って思った。

新発見。
カワイイ。

せんせーの八重歯に見惚れていたら
メグの後ろの席に座っていた女子が真後ろまで来ていて
「早く」って急かされてしまった。