せんせーは教卓の上に正方形の箱を置いた。
そう言えば教室に入ってきた時から
持っていた気がする。

商店街のくじ引きとかで使われるみたいな箱だった。
真ん中に大きな丸い穴が空いている。

「ナツキせんせーい、それなんですかぁ」

「学園で代々受け継がれている席替えくじ専用ボックスでーす」

「なにそれ、ただの箱じゃんか」

「これは神聖なるボックスなんだぞ?お前らの運命が全てこの中に…」

せんせーは慈しむみたいに箱を撫でた。
隣のサヨちゃんも楽しそうに笑っている。

サヨちゃんがこんな風に笑うのは珍しいと思った。

「じゃあ時間もないから。前の席から順番に引いてください。くじは一斉に開くからな?先に見たらダメだからなー」

廊下側の一番前の人から順番に教卓に進んでいく。
メグには残り二枚のくじしか残されないってことになる。
残り物には福がある、なんて言うけれど
″残り物″なんて、
自分で選択して勝ち取っていない物、
どっちの運命に転んだって
自分を褒めてあげることも
悔やむこともできない気がする。