スマホを新しくして一週間後。ぼーっとテレビを見ていたら、インターホンが鳴った。
 玄関を開けると、律音くんが不機嫌な顔で立っていた。

「話がある」

 警察にストーカー届けを出したんじゃ……と慌てたが、律音くんの後ろに警察はいない。
 だけど謝罪の必要性を感じて、私は頭を下げた。

「ごめんなさい。今までしてきたこと、全部ごめんなさい」
「許さない! 絶対に許さない!!」
 
 律音くんは本気で怒っている。当たり前だ。私のした行為で律音くんに嫌な思いをさせてしまった。
 情けなくて、涙がポタポタと落ちる。

「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「許さないって言っているだろう!! 勝手すぎる! いきなり連絡を絶ってさっ!! 一言、僕に飽きたって言えばいいだろう! 他に好きなヤツができたってっ!! 僕の感情をかき乱して、突然消えるってズルいだろっ!!」
「飽きていないし……、他に好きな人もいない……」
「じゃあなんで、連絡切ったんだよ!!」
「だって私、ストーカーだもん。律音くんに迷惑かけているから……」
「はあ? 今さらそれ言うかよ。毎日しつこくラインしてきたくせに!!」
「もう二度と送らないから……ごめんなさい」

 泣きじゃくる私に、律音くんは「許さない」と、低い声で告げた。

「僕の人生、めちゃくちゃなんですけど。迷惑をかけた責任をとって」
「どうやって……」
「もう一度、連絡先を交換しよう。今日からまたラインを送ってきて。毎日」
「えっ……?」

 わけがわからないながらも、新しい電話番号を教えた。律音くんからラインが入る。

『よろしく』

 キョトンとする私に律音くんは、

「まずは友達から始めよう」

 と、真っ赤な顔をしたのだった。