僕は自分の手で、幸せを壊すことにした。

「美雨ちゃん」
「なに?」
「僕はアニメとゲームが生きがいだからやめるつもりはないし、グッズとフィギュア集めも続ける。これからも僕は、オタクの道をいく。そういうのって……嫌いだよね……」
「嫌いじゃないよ」
「どうして⁉︎」

 彼女は冷蔵庫の扉を閉めると立ち上がり、棚の上のフィギュアに視線を向けた。

「だって、好きなんだよね? 私にはわからない世界だけれど……。律音くんが大切にしているものだから、否定したくない。応援するね。オタクの道、頑張って」

 僕は頭からすっぽりと布団をかぶった。声を押し殺して泣くのが大変だった。


 三次元の女性は決して、二次元の女の子が持つ可愛さを表現できない。それは、譲ることのできない真実。
 だけど同時に、二次元の女の子は僕が病に倒れてもお見舞いに来てくれないし、お粥も作ってくれない。
 
 館林美雨ちゃんは、僕が大切にしているものに理解を示してくれた。
 僕を受け入れてくれた彼女を僕は許し、そして——世界一大好きだって、叫びたい。